こんにちは、ぎんぴ&ちっぱです!
いきなりですがスペシャルティコーヒーという言葉を聞いたことがありますか?
名前だけ見ても特別なコーヒーであることは何となく予想できると思いますが、一体どのようなコーヒーをスペシャルティコーヒーと呼ぶのでしょうか?
- 私たち庶民の手には届かない王族たちに代々飲み継がれてきたコーヒー?
- 飲むとどんな病気でも治してしまうコーヒー?
- 滅多に収穫ができない希少価値があるコーヒー?
さてその真相は・・・・今日はスペシャルティコーヒーについて学んでいきたいと思います!
はーい
スペシャリティコーヒー誕生以前のコーヒーについて
まずスペシャリティコーヒーを知るためには、スペシャリティコーヒーが誕生する前のコーヒーについて知ることがとても重要です。
コーヒーは、コーヒーでいつの時代だって同じものなんじゃないのかな?
「スペシャリティコーヒー」という言葉が生まれたのは1980年代で、それよりも前の1960年代/1970年代においてはコーヒーはコーヒーでもかなり立ち位置が違うものでした。
当時コーヒーの質に関して基準は生産地側が独自に決めており栽培する標高であったり、サイズ感が評価対象となっており必ずしもそれが『美味しさ』に繋がるものではありませんでした。
「質」よりも「量」を求めるようになり、どんどん安価になり買いたたかれ、味も質も劣化しコーヒーは美味しくないものとなってしまったのです。
一所懸命美味しいコーヒー豆を作るよりも質は悪くてもいいから大量に作らないと生きていけない。そんな環境にコーヒー農園離れも起きていきました。
僕たちのポテンシャルはこんなものじゃないはず!
美味しいコーヒーを飲もう!
コーヒー業界全体の低迷を止めるために、適正な価格での取引を求める動きが徐々に出てきました。安価で美味しくないイメージとなってしまったコーヒーをどうしたらイメージアップできるのか。
そういったコーヒーの生産、流通、消費に関するさまざまな問題について議論する場がありました。コーヒー国際会議です。
そして1978年フランスで開かれたコーヒー国際会議でアメリカのエルナ・クヌッセン女史の発言がスペシャリティコーヒーという概念の誕生と言われています。
”Special geographic microclimates produce beans with unique flavor profiles.”
(“特定の地理的な微気候が、独自の味わい特性を持つコーヒー豆を生み出します”)
なるほど、それでそれぞれの土壌で育った個性あるコーヒー豆に着目する考え方が広まっていったんですね!
スペシャルティコーヒー協会の設立
コーヒー業界を盛り上げるためには消費者だけ、生産者だけといった一方のみを重視したものではなく、消費者/生産者の両者のことを考えていかないとなりません。
消費者にとっては良い品質のコーヒーが飲みたい、それも安ければ安いほど嬉しいものかもしれませんが、それでは生産者側にとっては不公平なものになり高品質なコーヒーは生み出せません。
品質を正しく見極め、適切な価格でやり取りを行う。そういった公平な考え方をある一部の人たちだけで理解するのではなくコーヒー業界全体として理解を深めていくことが重要となります。
1980年代世界各国でスペシャルティコーヒー協会が設立されました。
- 1982年アメリカスペシャルティコーヒー協会(SCAA=Specialty Coffee Association of America)設立
- 1998年ヨーロッパスペシャルティコーヒー協会(SCAE=Specialty Coffee Association of Europe)設立
- 2000年日本スペシャルティ協会(SCAJ=Specialty Coffee Association of Japan)設立
このスペシャルティコーヒー協会とは何を目的として設立したものなのでしょうか?
そこで日本スペシャルティコーヒー協会の基本構想ページを見てみましょう。
基本構想(引用)
日本スペシャルティコーヒー協会は、「スペシャルティコーヒー」に対する日本の消費者および世界のコーヒー生産者の認識を高め理解を深めます。
その栽培からカップのコーヒーに至るまでの体系的知識や技術の普及、啓蒙を図り、消費増大を目指します。
また、これにより日本の「コーヒー文化」のさらなる醸成、世界のスペシャルティコーヒー運動への貢献、およびコーヒー生産国の自然環境や生活レベルの向上を図っていくことを活動の基本構想とします。
コーヒーをただの飲み物としてではなく、栽培から僕たちのカップに入るまでに関わるすべての人たちのことを考えていることが分かるね!
そうなんだ。
一時的なものではなく、みんなが気持ちよく発展していくために継続できるシステム作りが必要なんだね。
スペシャリティコーヒーの定義について
日本スペシャリティコーヒー協会が提唱するスペシャルティコーヒーの定義を見ていきましょう!
日本スペシャルティコーヒー協会~スペシャルティコーヒーの定義~(引用)
消費者(コーヒーを飲む人)の手に持つカップの中のコーヒーの液体の風味が素晴らしい美味しさであり、消費者が美味しいと評価して満足するコーヒーであること。
風味の素晴らしいコーヒーの美味しさとは、際立つ印象的な風味特性があり、爽やかな明るい酸味特性があり、持続するコーヒー感が甘さの感覚で消えていくこと。
カップの中の風味が素晴らしい美味しさであるためには、コーヒーの豆(種子)からカップまでの総ての段階において一貫した体制・工程・品質管理が徹底していることが必須である。(From seed to cup)
具体的には、生産国においての栽培管理、収穫、生産処理、選別そして品質管理が適正になされ、欠点豆の混入が極めて少ない生豆であること。
そして、適切な輸送と保管により、劣化のない状態で焙煎されて、欠点豆の混入が見られない焙煎豆であること。
さらに、適切な抽出がなされ、カップに生産地の特徴的な素晴らしい風味特性が表現されることが求められる。
日本スペシャルティコーヒー協会は、生産国から消費国にいたるコーヒー産業全体の永続的発展に寄与するものとし、スペシャルティコーヒーの要件として、サステナビリティとトレイサビリティの観念は重要なものと考える。
スペシャリティコーヒーの定義はズバリ〇〇です!
と、簡潔に記載されているかと思ったのですがたくさん情報が出てきてパニックです。
一言ではなかなか言えないんだけど、でも一番最初に書かれている「飲む人がカップの中のコーヒーが美味しいと評価して満足するコーヒー」というのが重要ね。
なんだか当たり前のことを言っているみたいだけど・・・。
そう当たり前のことなんだけど、それがちゃんと定義されていなかったんだね。
美味しいコーヒーとは何か、その美味しいコーヒーを生み出すためにはなにをすればよいのか、がそれ以降の文章にある品質管理であったり、焙煎、抽出などの言葉に繋がるんだよ。
補則
1. スペシャルティコーヒーと一般のコーヒーは、SCAJのカップ評価基準に基づき、コーヒーの液体の風味(カップ・クオリティ)により判別・区分する。カップ評価基準はスペシャルティコーヒーの発展・変化に伴い随時修正する。
2.生豆についてのSCAJ独自の厳密な評価基準も必要と考えるが、現時点では各生産国の規格に合致していることを条件とし、欠点豆についてはSCAの基準を参考とする。今後の検討課題とし、必要に応じ適宜修正をする。
3.日本人がおいしいと感じるコーヒーの風味特性を研究課題とする。
スペシャルティコーヒーか否かについては、ちゃんと評価基準を決めて判断しているということだね。基準を決めておかないとブレてしまうからね。
「発展・変化に伴い随時修正する」「必要に応じ適宜修正をする」といった言葉からも、決めたらそこで終わりではなくて、柔軟に対応していこうっていう気持ちが分かりますね。
スペシャルティコーヒーの判定・評価の概要
日本スペシャルティコーヒー協会のホームページには、スペシャルティコーヒーの判定/評価基準も載っているので併せて確認しましょう!
1.カップ・クォリティのきれいさ
これはコーヒーの品質の基本的スタートポイントとなるもの。カップのきれいさとは「汚れ」又は「風味の欠点・瑕疵」が全く無い事。コーヒーの栽培地特性「Terroir」がはっきりと表現されるために必須な透明性があること。風味の「汚れ」「欠点」があると、Terroir による風味のプロフィールが隠され、飲む人が感知できにくくなる。
Terroir(テロワール)とは生育地の地理や気候による特徴を示す言葉よ。
よく言う雑味などのマイナス要素が少ないほど、そのコーヒーが持つ香りや味の独自性を感じられるということだね。
2.甘さ
コーヒーのチェリーが収穫された時点で、熟度が良く、且つ熟度がどれほど均一であったかに直接関係する甘さの感覚。甘さとは、焙煎されたコーヒーに含まれる糖分の量が絶対的なものではなく、甘さの印象度を創造する他の成分・要素との結合にも依存する。又、糖分が高くても、甘さを感じることを阻害する要因―辛さのある苦味、刺激的な酸味、強い汚れ、渋み等が有ると甘さを感じにくくなる。
3.酸味の特徴評価
コーヒーが如何に明るさを持つか。明るい爽やかな、あるいは繊細な酸味がどれ程であるかが評価対象。良質の酸味は、コーヒーに生き生きとした印象度を与え、繊細さ、しっかりとしたバックボーンを与えるもの。
酸度の強さではなく、酸の質について評価をする。
反対に、刺激的な酸味、不快な印象度を与える酸味、爽やかさ・キレの無い酸味、劣化した嫌な酸味は、スペシャルティコーヒーには有ってはならない。
酸味が評価対象なんですね。そうするとその酸味性を十分に楽しめるようにスペシャリティコーヒーって浅煎り寄りのコーヒーが多いってことかな?
4.口に含んだ質感
コーヒーにより伝えられる触覚。口に含んだ質感には、粘り気、密度、濃さ、重さ、舌触りの滑らかさ、収斂性感触などの感覚・触覚が含まれる。口に含んだ時の量感は、質感とは同じではない。量感に気をとられ過ぎると不快なザラツキによる触覚をコクと誤って判断する結果となる。質感の品質を評価せねばならない。
収斂性?ってなんだろう?
収斂(しゅうれん)性の意味としては、引き締めるといった意味だよ。テイスティングにおける収斂性とは苦味や渋みによって口の中が乾くような感覚を指すよ。
5.風味特性・風味のプロフィール
スペシャルティコーヒーと一般のコーヒーを区別する最も重要な項目。
味覚と嗅覚の組み合わせ。栽培―収穫―回収―選別―生産処理―保管―焙煎―抽出が理想的に行われれば、栽培地域の特性―Terroir ―が正しく表現されるもの。
コーヒーが一般的なプロフィールしか持っていないのか、あるいは栽培地の地域特性―Terroir が純正に表現できているかを明確に評価する。
コーヒー豆自体の良し悪しによる影響が一番だけど、私たちのカップに入るまでに行われる一つひとつの工程を正しく行えて初めてその豆が持つ個性豊かな味わいを頂くことができるということですね。
6.後味の印象度
コーヒーを飲み込んだ後で持続する風味は、コーヒーの他の属性により醸し出される心地よさを強める場合、弱める場合、あるいは一切駄目にしてしまう場合とがある。
コーヒーを飲み込んだ後の「口に残るコーヒー感」が、甘さの感覚で消えて行くのか、あるいは、刺激的な嫌な感覚がにじみ出てくるのかを判定する。
7.バランス
コーヒーは風味の調和が取れているのか? 何か突出するものは無いか? 何か欠けているものは無いか?
これもまた難しいですね。円に近いバランスであっても個性が無くていけないし、かといって他の要素が消えてしまうような飛び抜けた特異性があっても良くないですし。そこも含めて個性はあれど他の要素も尊重するようなバランスが必要ということでしょうか。
コーヒー区分について
特別な評価を行って認められたコーヒーがスペシャリティコーヒーということはわかりました!
スペシャリティコーヒー以外にもコーヒーって分類があるのかな?
コーヒーの区分について見ていこう!大きく分けて4つに分かれるんだよ。
スペシャリティコーヒー
コーヒーの専門家(カッパー)によるテイスティング(カッピング)による厳格な品質基準に基づいて評価され、80点以上のスコアを獲得したコーヒーを指します。
スペシャルティコーヒーは、世界のコーヒー生産量の約10%から15%を占めるとされています。割合としては、全体のコーヒー市場においては少数ですが、品質を重視する消費者の増加に伴い、年々拡大しています。
プレミアムコーヒー
スペシャリティコーヒーのように厳密な定義や判断基準はありません。
スペシャリティコーヒーで80点以上のスコアを取れなかったコーヒー豆や生産地や農園名などがちゃんと管理され通常の業務用コーヒーよりも高品質なものとされています。
プレミアムコーヒーはスペシャリティコーヒーよりも流通量が多いため、一般的な市場でも目にすること、手に取ることが多いコーヒーとなります。
コマーシャルコーヒー
コモンディティコーヒーとも呼ばれます。コマーシャルコーヒーは、大規模な農園やコーヒー会社によって大量生産されているコーヒーです。品質よりも生産性や価格が優先されコスト効率が重視されています。
単一農園ではなく一定の品質を保つために各農園の豆を合わせたものが多いです。スーパーマーケットやチェーン店、飲食店、インスタントコーヒーや缶コーヒーに至るまで幅広く流通しているコーヒー豆となります。
ローグレードコーヒー
4つの区分の中で一番品質が低いコーヒー豆です。低い価格帯のコーヒーブレンドやインスタントコーヒー、缶コーヒーに使われることが多いです。
商品の価格を抑えるためにローグレードコーヒーをある一定の割合でブレンドされたりもします。
4つも区分があったんだね。スペシャリティコーヒーは良く店頭で表示されているけど、それ以外のコーヒーはあまり目にしたことが無いなぁ。
「コマーシャルコーヒー使用!」とかなかなか大きく宣伝しているところは見かけないね。
美味しさの良し悪しはあるけれど、どれもちゃんと役割があってコーヒー業界を支えているんだね。
まとめ
カップの中に注がれた一杯のコーヒー。でもこれはどこの国で作られて、誰によって収穫され精製され運ばれ、焙煎されてこのカップの中に入っているのか。
その全てを正しく管理し、評価し飲み手である僕たちが実際に美味しい!満足した!と思えるコーヒーをある一定の基準をもって定める。そうして生まれたのがスペシャリティコーヒーという概念です。
単純に消費者だけが満足すればよいものではなく、生産者から始まるコーヒーに携わる人たちも含めてみんなで納得のいく取引を行いコーヒー業界全体を向上させるものです。
今では喫茶店、カフェ、コンビニやスーパーでもスペシャリティコーヒーという言葉を目にするようになりました。敷居が高く手が届かない存在ではなく、親しみのあるいつでも美味しく飲めるコーヒーです。
普段から飲んでいるコーヒーももちろんいいですが、是非スペシャリティコーヒーを購入して飲んでみて欲しいです。香りから味から、そして飲んだ後に広がる余韻に至るまでいつものコーヒーとは異なるもう一つのコーヒーの世界が楽しめると思います!